独身のまま迎える誕生日がつらい。三十歳の私は、一年に一度の通信簿をつけていました
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おめでとう、が届く日です。嬉しくないわけではありません。ちゃんと嬉しい。それなのに、通知が止まって部屋が静かになった時間だけ、うまく説明できない重さが残ることがあります。
おめでとうは嬉しいのに、夜になると重たくなります。
私も三十歳の誕生日に、一人でそれを考えていました。
「誕生日 独身」と検索して出てくるのは、たいてい過ごし方の提案です。自分にご褒美を買う、ひとり旅に出る、SNSを見ない。役に立つ人には立つと思います。ただ、この記事で書くのはそこではありません。
一日をどう過ごすかの前に、その日が何の日になってしまっているかの話です。
① つらいのは、誕生日という一日ではありません
誕生日そのものが嫌いになった人は、たぶんそんなに多くありません。子どもの頃は待ち遠しかったはずです。
変わったのは日付ではなく、その日に自分がすることのほうです。年齢がひとつ増える日は、いつのまにか一年ぶんの結果を見せられる日になります。去年の今日から今日まで、自分は何を進めたのか。何も変わっていないのではないか。
つまり誕生日は、一年に一度の通信簿になっている。しかもその通信簿は、自分でつけて、自分で受け取ります。
これがつらいのは、評価する人と評価される人が同じだからです。逃げ場がない。誰かに言われたなら反論もできますが、自分でつけた評価には反論のしようがありません。
だから「誕生日 一人 つらい」で検索した先に過ごし方の提案が並んでいても、あまり効かないんだと思います。過ごし方を変えても、通信簿は今夜また配られるので。
② 三十歳の誕生日に、私が考えていたこと
私にも、はっきり覚えている誕生日があります。
三十歳になった日です。その日、一人で「二十代のうちに結婚したかったな」と考えていました。
それだけです。何か特別な出来事があったわけではありません。誰かに何かを言われたのでもない。ただ静かに、そう思っていました。
今になって思えば、あの日の私は誕生日を祝っていたんじゃなくて、結果を見に行っていたんですよね。二十代が終わった。それで、私は何を持っているんだろう、と。
③ 通信簿の項目が、いつのまにか一つに減っていました
もう少し正直に書きます。
あの日の私は、一年ぶんを見ていたつもりで、実際に見ていた項目はひとつだけでした。結婚したか、していないか。ほかは見ていませんでした。
仕事のことも、友達のことも、その一年で自分が何を面白いと思ったかも、そこには入っていませんでした。全部、点数の外にありました。
本当は「幸せになること」が目的だったはずなんです。それがいつのまにか、「早く結婚すること」が目的にすり替わっていた。目的がすり替わったことに、私は長いこと気づきませんでした。
すり替わりは、たぶん一日では起きません。少しずつ、手段が目的の席に座っていく。結婚は幸せになるための道のひとつだったのに、いつのまにか結婚そのものが合格ラインになっていました。
一項目しかない通信簿は、当然きびしくなります。満点か、ゼロしかないので。
年に一度、自分の遅れを数えてしまいます。
その「遅れ」は、誰かと比べたときにだけ出てくる数字です。
④ 項目が一つになると、選び方が変わります
これは気持ちの問題だけでは終わりませんでした。行動のほうが先に変わっていきます。
当時の私は、「少し違うかもしれない」と思う相手にも会い続けていました。理由ははっきりしていて、「もう年齢的に贅沢は言えない」と思っていたからです。
言葉にすると身も蓋もないのですが、要するに合格ラインを下げたのではなく、合格の中身を空にしたんだと思います。結婚できるかどうかだけが項目なら、相手が誰でも項目は埋まってしまう。だから「違うかも」を判断材料から外しました。
結果はどうだったか。疲れただけでした。会った回数は増えたのに、進んだ感じはまるでない。当たり前です。合わない人と会う回数を増やしても、合う人に近づくわけではないので。
焦ると、動く回数は増えるんです。ただ、増えたのは回数だけでした。
そのうえで止まるのが不安なら、休んだ年が不利になるのかについても書いています。
⑤ 一年に一度、自分を評価し直さなくていい
ここで「年齢は気にしなくていい」と書くつもりはありません。気になるものは気になるので、そう言われても消えないことを、私は知っています。
代わりに一つだけ。通信簿をつける役をやめる、というやり方があります。
誕生日に何かを判定しなければならない決まりは、どこにもありません。年齢が増えるのは事実です。でも、事実に成績はつけられないんですよね。今日が来たから、今日になった。本当は、それ以上の意味はありません。
役を降りると、その日は普通の一日に戻ります。何もしたくない年があってもいい。誰にも会いたくないなら会わなくていい。祝われ方の正解を探さなくていいのは、たぶんそこがそもそも試験ではないからです。
一項目の通信簿から降りるのに、結婚は要りません。降りると決めるだけで降りられます。
焦らないでいるなんて、私には無理そうで。
無理に消さなくて大丈夫です。減っただけで、なくなってはいませんでした。
⑥ 焦りが減ったのは、急ぐのをやめたあとでした
私の焦りが軽くなったのは、結婚が決まったからではありませんでした。順番が逆だったんです。
一度立ち止まったあと、私はこう思うようになりました。急いで結婚しても、幸せとは限らない。それより、自分らしくいられる相手と一緒になりたい、と。
その「立ち止まった」時期のことは、婚活を休みたいと思ったときのほうに書きました。
そう思えたころから、不思議と焦りが減っていきました。何か解決したわけではありません。目的が元の場所に戻っただけです。幸せになるために結婚したいのであって、結婚するために急ぐのではない。
そのあとの婚活が楽になったかというと、そこは正直、そんなに変わりませんでした。うまくいかない時期もありました。
来年の誕生日を変えたいと思ったなら、それは焦りとは別のものです。急ぐために動くのと、同じ夜をもう一度過ごさないために場所を選び直すのは、似ているようで違います。
大事なのは、いつまでに決めるかではなく、来年も無理なく続けていられるかどうかでした。
※日付とは切り離して考えるなら。
→ 誕生日と関係のないところで選ぶ
よくある不安(Q&A)
Q. 誕生日が近づくだけで、気持ちが落ちます。おかしいですか?
おかしくありません。近づくと落ちるのは、当日より「これから評価される」ほうがしんどいからだと思います。試験本番より前日が嫌なのと、たぶん同じです。当日になると案外普通に過ぎていく、ということもあると思います。
Q. お祝いのメッセージに、素直に喜べません。
メッセージが嫌なのではなく、そこに自分の現在地が重なってしまうんですよね。ありがとう、とだけ返しておけば十分だと思います。感情の中身まで、返信に乗せる必要はありません。喜べない自分を薄情だと思わなくて大丈夫です。
Q. 誕生日に何もしたくありません。何かしたほうがいいですか?
しなくていいと思います。「独身なんだから自分で自分を大事にしないと」という言い方をときどき見かけますが、あれも一種の課題ですよね。何もしない日として過ごして、次の日に普通に起きる。それで足りる年が、あってもいいはずです。
Q. 誕生日をきっかけに婚活を始めるのは、勢いすぎますか?
きっかけとしては自然だと思います。ただ、始めるなら「今年こそ決める」ではなく「やり方を試す」くらいの構えのほうが続きます。期日を自分に課すと、④で書いたとおり判断が甘くなるので。急がない人のほうが、結果的に長く動けます。
あの日の私の通信簿には、項目がひとつしか残っていませんでした。
項目は、自分で増やせます。今日が来ただけの日に戻すのも、たぶんできます。
来年の今日は、通信簿ではなく、ただの誕生日でありますように。
誕生日は年に一度ですが、友人の結婚報告は季節を問わず届きます。
誕生日の夜にふと押し寄せる不安が、なかなか消えないなら。
誕生日と同じで、彼氏いない歴を聞かれた瞬間も、自分で自分に点をつけてしまいがちです。